●AIN'T NO MOUNTAIN HIGH ENOUGH

AIN'T NO MOUNTAIN HIGH ENOUGH
/Marvin Gaye Tammi Terrell
Song: Nicholas Ashford, Valerie Simpson
Produced: Harvey Fuqua, Johnny Bristol

 この夏、やたらめったらテレビでスポットが流れた映画「アイス・エイジ」。最近のバージョンでは「AIN'T NO MOUNTAIN HIGH ENOUGH」が使われていて、これが、有名人がとっかえひっかえ出てきて「感動します!」なんてことを言ううるさいだけの押しつけがましいコメントを使っていた以前のバージョンより説得力があって、あらためてこの曲が持つ不思議な力を再認識してしまいました。そういえば数年前に公開されたジュリア・ロバーツ主演の映画「グッドナイトムーン」でも子供達がジュリア演じる継母と心を通わすきっかけとなる歌としてこの曲が重要な役割を果たしていました。「どんな高い山も、どんなに深い谷も、どんなに広い河も、ふたりを離れ離れにすることはできない…」という有名なサビの部分は友情や信頼を描くような映画のテーマを表現するには重宝するようです。
 歌うのはもちろんマービン・ゲイとタミー・テレル、1967年の4月にこのコンビの最初のシングルとしてリリースされてR&Bチャートで3位、POPで19位まで上昇するヒットを記録しています。ダイアナ・ロスが1970年にカバーバージョンをNo.1ヒットにしていますが、アレンジや曲構成、一部歌詞にいたるまで変更されているので、そちらは別物だと考えた方がいいのはみなさんもご存知の通りです。オリジナルバージョンのイントロはたった5秒の短さですが、直接ハートを打ち鳴らして期待感をなんともいえず盛り上げてくれます。イントロクイズで使えば第一音で一斉に回答ボタンが押されそうですね。そしてタミーという理想のデュエットパートナーを得て「Listen Baby」という呼びかけからのりのりのマービンのボーカル、そして堂々とそれを受けて立つタミーの力強さと愛らしさを兼ね備えた歌声、胸がどきどきするような熱いデュエットですが、驚いたことにレコーディングはふたりのパートが別々にレコーディングされたものだそうです。プロデューサーでマービンの友人であるジョニー・ブリストル曰く「ふたりがお互いに対して良い印象を持っていたので、スタジオに相手がいなくても、テープに吹き込んだ相手の声を聞くだけでお互いの心をゆり動かした」そうでそれは、「魂のふれあいがなせるもの」だと断言しています。実際にはタミーには別の恋人がいて、マービンには妻がいました。マービンがタミーに好意を描いていたことは確かなようで、マービンはそのせつない思いを「僕らは小説や演劇の登場人物を作りそいつに歌せただけなんだ。僕にとっては現実逃避だったんだ。」と告白しています。この曲のヒット中にタミーが病気で倒れたということも、よりこの曲に伝説な物語をつけ加えています。彼女はその後も病院を抜け出してはレコーディングを重ね、その命を燃やすようにして「YOU'RE ALL I NEED」(R&B1位/POP7位)や「AIN'T NOTHING LIKE THE REAL THING」(R&B1位/POP8位)、「WHAT YOU GAVE ME」(R&B6位/POP49位)などをマービンと録音してヒットへ導いています。しかし、残りのほとんどの曲はタミーがソロでレコーディングした曲にマービンがデュエットになるように歌を重ねたり、ヴァレリー・シンプソンがタミーの声真似をして録音したものでした。そして1970年3月16日、タミーは24才という若さで亡くなります。マービンはショックのあまりしばらく音楽活動を停止します。そのマービンが実の父親の銃弾に倒れてからもすでに20年が過ぎようとしていますが、その第一報を聞いたのを昨日のようのことのように思い出されます。純粋な愛を信じる恋人達を描いた「AIN'T NO MOUNTAIN HIGH ENOUGH」を、その後訪れる悲劇など全く知る由もなく朗らかに歌い上げるふたりのボーカルに歌詞にはないはずのせつなさを感じ涙無しでは聞くことができません。(2002年8月)
収録アルバム「United/マービン・ゲイ&タミー・テレル」(☆)
        「The Complete Duets/マービン・ゲイ&タミー・テレル」(☆☆☆)

Memo
 マービン・ゲイとタミー・テレルのコンビはデュエットの理想形として多くのアーティスト達がそのスタイルを模倣ようとカバーバージョンを録音しています。この「AIN'T NO MOUTAIN HIGH ENOGH」はダイアナ・ロスとテンプテーションズ、ステイシー・ラティソウとハワード・ヒューイットのそれぞれのチームのカバーが同じモータウンからリリースされています。「AIN'T NOTHING LIKE THE REAL THING」はクリス・クリスチャン&エイミー・ホーランドのホワイトクリスタルバージョンも秀逸ですし、アンジェラ・ボフィルがボズ・スキャッグスを迎えてレコーディングしています。「YOU'RE ALL I NEED TO GET BY」はデニース・ウィリアスム&ジョニー・マティスによってカバーされています。渋いところでは「IF THIS WORLD WERE MINE」をルーサー・ヴァンドロス&シェリル・リンが歌ったり、ボビー・コールドウェルがゲストボーカリストを招いて「YOUR PRECIOUS LOVE」をレコーディングしています。

EndlessLove アーティスト別インデックス女性編
EndlessLove アーティスト別インデックス男性編
HOME